活動のきっかけ
亡き母と祖母からの宿題
私が大学1年生の秋に、母は脳腫瘍で亡くなりました。享年46。あまりに突然のことで後悔ばかりの日々を過ごしました。父も母の死をなかなか受け入れられなかったのでしょう。父の前で「おかあちゃんは」と母のことを話そうとすると、父は話題を避けるのです。辛すぎて話せない。そんな拒絶だったと思います。結局、父は、母親の思い出を娘に話すことなく、亡くなりました。
母に対しては悔いばかりが残ります。
私が結婚して子供を産み、その子を抱っこしてくれてから半年後に祖母が亡くなりました。祖母とは何度か二人で旅行をし、そのときの会話を旅行記に残していました。また、祖母は家計簿にひと言日記をつけていましたので、日記の中に一番たくさん出て来る言葉をタイトルにして、遺稿集『有り難いことだ』という小冊子を作りました。これは親戚一同も喜んでくれ、少しだけおばあちゃん孝行ができたかなと思ったものです。
一緒に旅行をしたとき、「女学生の頃は何の勉強が好きだった?」「どうしておじいちゃんと結婚したの?」「養蚕農家のお嫁さんて大変だったでしょう?」「大家族の食事、おかずはどんなものを作ってたの?」と興味本意の私の質問に、「そんなことが面白いのかねえ」「しゃべってるとだんだん思い出してくるね」と楽しそうに応えてくれた祖母。
「こうして話してみると、いろいろなことがあったね。長生きもしてみるものだ」。そう話していました。祖母にとっても、少しだけ人生を振り返ることができた貴重な時間になったことでしょう。
『有り難いことだ』の冊子が子どもである伯父、叔母にとっても、孫である私たち世代にも、またひ孫世代にも祖母の体験を、想いを伝え、残してくれています。
思い出を語り、振り返ることは、自分の人生をもう一度見つめ直す機会になると思います。そして、子や孫、ひ孫の世代へは、そのお話が未来への生き方のヒントになるはずです。
だからこそ今、あなたの「私物語」をおしゃれな和装本にして残しておきませんか。