和綴じ本について

 

和綴じ本とは? 

 

 明治時代に欧米から入ってきた「洋本」に対して、古来からある書籍を一般的に「和本」と呼んでいるようです。 

 その和本は、もともとは中国から文字と紙、さらに筆、墨、硯などの文房具が伝わり、さまざまな工夫を重ね、長い年月を経て「本」としてのスタイルを作り上げてきたようで、「和本」という言葉には、日本の歴史そのものが綴られていると言っても過言ではありません。掛け軸のように巻いた「巻物」やお経の本のような蛇腹折りの「折本」、さらに江戸時代になると、版木と紙の大きさなどが規格化され、少部数ながら書籍として流通するようになりますが、なかでも、和本のスタイルを一身に集めたような本が「四つ目綴じ本」です。文字通り、綴じ穴が4つある和本で、これはお習字などで使う和紙を二つ折りにして丁合いし、その一辺を糸でかがった本のことです。現在でも邦楽や謡など、「和」の世界で生き続けている伝統的な製本技術ででき上がった書籍です。 

 

 

和綴じ本の魅力 

 

 和綴じ本の魅力は、出来上がりの本のイメージを表現しやすいってことではないでしょうか。規格の寸法にとらわれることなく、こういう本が作りたいというイメージどおりのスタイルを形にしやすいところでしょうか。自費出版を前提に本を出版するとき、「最低部数は50部です」とか、「大きさはB5サイズで32ページ以上でないと本になりません」とか、さまざまな制約がついて回りますが、「和綴じ本」はほんとうに自由です。ページ数が少なければ少ないなりに、部数は1部からでも作ることができます。洋服の世界で例えるなら、和綴じ本はオーダーメイド。 

 世界に一冊、あるいは数冊だけのオーダーメイドの本ですから、でき上がった和綴じ本は、手に取っただけで、とても温かな懐かしさにあふれています。ぞんざいに扱うことがはばかられるような、愛着が感じられます。 

 

 

手作りの味わい 

 

 世界に一冊の本ですから、出きるだけ丁寧にかがって「本」にしますが、江戸時代の出版業のように、版木に文字を彫り、刷るのでは、時間も経費も膨大な金額になってしまいます。せっかくわれわれが手に入れた利器をおおいに使って、極めて少部数の「和綴じ本」を作っていこうと考えています。 

 実際にはレイアウトソフトのInDesignでページメイクをし、インクジェットプリンターで印刷しています。こうしてプリントした用紙(和紙でも洋紙でも)を二つ折りの袋綴じにし、天地をトントントンとそろえて、ページが前後していないか、抜けがないかを確認したのち、本文の綴じシロに2カ所、目打ちで穴を開け、紙縒りで仮綴じします。仮綴じした本文と表紙、裏表紙、見返しといった本を構成する各部品がそろって始めて、4カ所に穴を開け、糸かがりをし、四つ目綴じの本にしていきます。綴じ終わってから、表紙にタイトルとなる書名を記した部分、和本では「題簽(だいせん)」といいますが、このタイトルを張って出来上がりです。 

 実際の作業プロセスは[「四つ目綴じ本」作り方、公開]をご覧ください。 

 

 

 youtubuにて、「四つ目綴じ本の基本をマスターしよう」を公開しています。

 https://www.youtube.com/watch?v=Ohn8-H30G9o